VWのこれまでの歴史と不正発覚の行方
前回の続きです。
まず最初にフォルクスワーゲン(以下、VW)ってどんな会社なのか?というと、
元々はナチス軍政下の国策会社として発足し、戦後は民営化された会社であるがドイツ最大の民間企業であり、民間企業とはいえドイツという国家と深くつながっているため民間の仮面を被った国営企業といっても間違いないと思います。株式だって創業家一族であるポルシェ家とピエヒ家が50%強、ニーダーザクセン州が20%の株式を所有してますからね。州が株主ってどういうことやねん!!って話ですね。
ちなみにVWはその傘下に様々なブランドを所有しており、「あぁあれもVWなんだ!」と驚くブランドも入っているし、なんだその無名のブランド知らねー!!っていうのもあります。
ポルシェとかベントレーとかランボルギーニとかは結構みんな知ってるし、なにより高級車ってイメージが強いと思います。ちなみに超高級車に関しては以前にココで書いてます。
そんな一大カーブランドでもあるVWを含むドイツの自動車産業ではなんと
国民の7人に1人が働いており、
全輸出の2割を占めている
最大の輸出産業でもある。
少し古いですが下の表を見てもらうと、ドイツの貿易収支がずば抜けている事がよくわかると思いますし、その莫大な貿易収支の2割を自動車産業が占めていると思うと、それは相当な額なわけで、今回のVWの不正で自動車産業の顕著な衰退が起きた場合はEU全体の衰退に繋がると言ってもなんらおかしくはないのです。
では今回の不正がフォルクスワーゲン(以下、VW)の問題なのか、それともドイツという国全体を巻き込んだ問題なのか、はたまたEUという連合国に跨った問題なのかという点を確認したいと思います。
#1. VWだけの問題なのか?
これはNo!!
すでにBMWのSUV”X3″が欧州の排ガス基準の11倍の数値を検出したという報道がなされているのでBMWもアウト!!ただしベンツは未だ特に報道もされていないのとすでに「不正に排ガスを制御する装置は使っていない」との声明を発表したのでセーフ?
でも「不正に排ガスを制御する装置“は”使っていない」って事は
「使ってはいないけどモリモリ基準値以上は排出してまっせ!!」って事なのか?
今後は
同じドイツの車メーカー“だから”と見做されて風評被害をくらうのか?
同じドイツの車メーカー“なのに”不正をしていなかったとして頭一つ抜けるのか?
同じドイツの車メーカーだから“やっぱり”不正してて黒なのか?
が見どころかもしれません。
#2. ドイツという国だけの問題なのか、EU全体の問題なのか?
これはEU全体の問題だと思います。もしEU諸国が「俺らは巻きこまれた」って言ったら被害者面しやがってと思いますが、AFPによると
ドイツの政策方針書で、欧州連合(EU)の規制機関に対し、最新の車両試験でも重大な抜け穴を残し、実際の二酸化炭素(CO2)排出量が公式結果として発表される排出量より多くなるよう要請している。
この文書について最初に報じた英紙ガーディアン(Guardian)は、同様の要求を記した政策方針書がフランスや英国にも存在すると伝えている。
流出した技術文書の日付は今年5月で、内容はフォルクスワーゲンの不正問題で焦点となっている窒素酸化物(NOx)ではなく、CO2排出量の測定検査に関するものだ。従来の試験NEDCから厳密な新試験WLTPへの変更点に、制限を加える方策を具体的に論じている。
http://www.afpbb.com/articles/-/3061227から抜粋
厳格な新試験に変更しろといいながら審査は甘くしろっていうこの矛盾。なんなんですかね?
しかもこの審査、本当に抜け道だらけで
・エアコンや電力を消費するパーツを外して排ガス試験
・重量軽減のためシートも外して排ガス試験
・「下り坂」で排ガス試験
ついには
「EUで排ガス試験に使用される車両は「ゴールデンサンプル」と呼ばれ、市販車とは何の関係も無い」
なんて記事もあって、その試験意味あんのか!!って思います。
ただ、さっきの貿易収支の表もそうですが、基本的にEU全体の自動車産業は“車のパーツをドイツが他のEU諸国から購入して車を製造し輸出する”というサイクルができているため、ドイツ自体の輸出が滞ると結果的に他の国もジリ貧になっていくんですね。なので、”見て見ぬふり”をするしかなかったのかもしれません。
でも、この不正は8年前にはこのソフトを納入したBOSCHが「違法じゃね?」って警告してて、4年前には社内技術者が「これ試験で使ったら違法じゃね?」って内部告発までして、NGO”ドイツ環境支援協会”がドイツの運輸省担当に不正を伝えてたみたいだし、その面会記録に「問題は省内で認識されていた」っていう記述もあって、しかも問題対応のため国連欧州経済委員会(UNECE)など参加したことが記載されているし、、、って事はもうドイツ政府もグルで不正を知っていながら見て見ぬふりをしてたって事なんじゃないんですかね?
で、発覚した時にCEOだったヴィンターコーン氏はBOSCHからの生え抜きで、しかも技術畑出身だからこの不正に関して「知りませーん、わかりませーん」なーんて言えるわけがないですね。
でも、この不正の背景と下に書いた歴代社長の経緯を見ると、なーんとなく「こいつがチクったんじゃね?」って思う人いません?
1993年:ピエヒ氏(創業家出身)がVW社長就任
2002年:ピエヒ氏が監査役会長に、BMW出身のピシェッツリーダー氏がVW社長に就任
2006年:ピシェッツリーダー社長(生え抜き)が退任(ピエヒ氏主導の事実上の引責辞任)
2007年:アウディのヴィンターコーン社長(生え抜き)がVW社長に就任 ←不正スタート
2015年4月:ピエヒ氏がヴィンターコーン氏の任期を巡り、孤立したのが理由で会長職を辞任
2015年上期:販売台数世界一位・不正発覚・ヴィンターコーン氏辞任 ←イマココ
うん、たぶんこの人だろうね、フェルナンド・ピエヒ氏
だってなんだかStarWarsに出てくるシス卿に似てるし。
でも、元々ピエヒ氏とヴィンターコーン氏は仲良かったんですよね。前任のピシェッツリーダー氏が解任されたのもピエヒ氏との軋轢があって「あいつ気にくわねーからお前社長やってくんね?」って流れで社長就任っていうのが大方の予想です。
でも結果残さないと嫌われちゃう → 嫌われたら解雇されちゃう → ヤダヤダ → そうだ、売れればいいんだ!!
っていう事で(絶対そんな安直ではないけど)販売を強化するんですね。
でも就任した当時(2000年代)はTOYOTAやHONDAが米国市場を席巻しシェアを拡大していく中、VWのシェアは3%程度で、その差は広がるばかり。そしてそこに追い打ちをかけるように環境問題に対応した量産型ハイブリッド車”プリウス”の発表で、その差は決定的。
また当時のEUはハイブリッド車でなくディーゼル車の開発に注力していて、その結果が”クリーンディーゼル”の誕生だったのです。
※VHSとベータの戦いみたいな感じで今更ハイブリッド車を研究しても二番煎じになるから独自路線のクリーンディーゼルで逆転してやるぜ!っていう意気込みがあったのかもしれません。
ただしそこでも問題が!!
それは排ガス規制の問題。
緩々ガバガバのEUと違い、米国の基準はキツキツ。
※特にNoxは、2008年の欧州の規制値の50%以下に抑制
燃費だったらハイブリッド車に負けないのに!!
ちくしょーなんでだよ、いいじゃん排ガスくらい!!
で、結果的に不正に手を染めるわけですね。
さてこれからのVWはどうなってしまうのか?もちろん制裁金を払う必要もあるし、株主などの集団訴訟も起こされるでしょう。そして排ガス規制に適した車にした場合、その性能をキープすることはできるのか?
そして一番の問題は“失墜した信頼の回復をどうするのか”だと思います。
信頼を得るのは時間がかかりますが失うのは一瞬です。これは全ての仕事に当て嵌まると思います。これは大企業だろうが零細企業だろうが関係ありません。
これを教訓にというわけではないですが、これからも弊社の信条の一つでもある
“誠実なサービスの提供”
を遵守し、一人でも多くのお客様にお得意様になっていただけるように努めてまいります。
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