アドブルー”AdBlue”が足りない、脱炭素社会の弊害とは
アドブルーってなに?
排出ガスをキレイにするために必要不可欠な高品位尿素水で常温で保存できる、無色・無臭の液体です。
尿素SCRシステムという有害な排出ガスを浄化するシステムで窒素酸化物と化学反応を起こすことで無害化することが目的で一部のディーゼルエンジン車に搭載されています。
東京都などが中心となり、排ガス規制を推進する中で大気汚染を少しでも低減させるため、尿素SCRシステムが採用されました。この尿素SCRシステムが有害物質を無害化するためにアンモニアが重要となるものの、可燃性が高いためそのまま流用することはできず、尿素水という形で利用することで実用化することができ、その尿素水が“アドブルー“という名称で販売されるようになりました。
アドブルーと石炭と中国
なんでアドブルーが品薄になったかというと中国からアンモニアが輸出されなくなったから。
アドブルーに必要なアンモニアは石炭を精製してできるんですが、そこで一悶着ありました。
なんで輸出されなくなったのかというと、中国とオーストラリアがファーウェイやコロナウイルスに関する問題で中国にあーだこーだ注文した結果、「うっせーんだよ!!じゃあもうお前から石炭買わない!!」ってなって中国がオーストラリアから石炭を買わなくなったことが原因です。
ただ中国国内の石炭の産地が豪雨にみまわれたおかげで供給がストップ、国内の石炭火力発電所を稼働させることができずに一部地域で電力不足が発生し、工場などが軒並み稼働停止に追い込まれました。
これがきっかけでアンモニアの輸出がストップしたわけです。
これで困ったのはお隣、韓国。
アンモニアの輸入の97%も中国に頼っていたため、尿素水含めアンモニア関連の製品が不足することになりました。
日本国内はどうなの?
韓国にも大打撃ですが、もちろん日本にも大打撃です。
日本はアンモニアを自国生産で80%近く賄っていますが、今回は色々と悪いタイミングが重なりました。
1つ目は国内大手メーカーの三井化学が所有する尿素水などを製造する工場が10月半ばから定期修理に入りました。
このタイミングと中国の輸出規制のタイミングが被り、日本国内の尿素水が一気に減りました。
2つ目は、先に尿素水不足となった韓国からの注文が殺到したため、国内の需要とは別の需要が発生し、そこに一部の尿素水を輸出する会社が出てきたため、日本国内の尿素水不足が深刻化したと考えられます。
現在もアドブルーを取り扱うガソリンスタンドなどでも欠品が起きている状況です。
尿素水不足の影響
最初にも書いた通り、尿素水はディーゼル車に使用される専用の液体です。
国内の物流に使用されているほとんどの車がディーゼル車なので、彼らにとって尿素水がなくなると走行することが難しくなります。
つまり今回の尿素水不足で国内の流通が少し停滞する可能性があります。
また物流だけでなく街中を走る清掃業者のトラックなども、もちろん尿素水が必要なのは同じなので彼らにも影響が出ます。
「別に尿素水がなくても、排気ガス内の有害物質の割合が増えるだけで走ることに影響ないでしょ」って思うかもしれませんが、これが間違い。
ディーゼル車が1000km走行するごとに約1Lの尿素水が消費され、もし尿素水が空になった場合はエンジンの始動ができなくなってしまいます。つまり走行不可。
この年末時期はお歳暮やクリスマス商戦で物流が増えてくる中での、この尿素水不足はボディブローのようにジワジワ影響が出てくると思われます。
北京オリンピックで、大気汚染された街並みを晒したくない中国はこれからも石炭の消費を絞るでしょうし、このアンモニア不足は今後も長引く様相です。
脱炭素社会を掲げるのは結構ですが、今回のような二次、三次の影響が出るのは別の分野でも増えてくることでしょう。
もちろん脱炭素社会の実現には多少の犠牲は必要なのかもしれませんが、いきなりの方向転換ではなく技術革新と共に未来への舵をきってもらえたらいいと思う今日この頃です。
今関商会
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