【原油の話】質を決める3つの基準・価格を決める3つの指標(WTI、BRENT、Dubai)
原油って~という記事とかを書いてる最中に、
原油といっても一括りにはできないんですよー!!
それぞれ品質が違うんですよー!!
って内容を書いてたら、長くなりすぎてしまったのでこっちでスピンオフ的に書きたいと思います。ただスピンオフって言葉を使いたいだけだけど。
原油って~の記事は
1.そもそも原油ってなんなん?
2.荷卸しされた原油はSSに行くまで
を読んでいただければと思います。
まず、原油を精製すると大まかにいって5つの燃料が生まれます。(下の図参照)ただその5つの割合は原油の質によって変わってしまい、ガスや石油をたくさん精製できる原油もあれば、どうしても重油などが多く出てしまう原油もあるわけです。
もちろん石油元売り会社としては、出来るだけガソリンとかガスが多く取れる良質な原油をできるだけ安い価格で輸入して国内で精製してガソリンスタンドに卸して売るっていう流れなんですが、やはり市場の摂理としてそういった原油は値段が高くなります。
今回はその質を定義する3つの基準と原油の価格動向に関係する3つの指標を説明します。
まずは3つの基準から説明していきたいと思います。
API比重
API 比重は API 度ともいい、API が制定した比重表示方法(ボーメ度)である。
これは石油類の比重について欧米諸国では広く用いられており、比重との関係は次式のとおりである。
API 比重の測定には、欧米では API 度浮秤{ふひょう}を用い、ASTM D1298 などに試験方法の規定がある。
しかし、日本工業規格(JIS)では K2249(原油および石油製品の比重試験方法並びに比重・質量・容積換算表)に参考として換算表が付いていて、必要なら比重 15/4 ℃から API 比重を求めることができるようになっている。参照:http://oilgas-info.jogmec.go.jp/
うん、読んだけどさっぱりわかんないよね。
まぁともかく、このAPI比重っていうので原油が5種類に分類されているわけです。
分類 | 比重15/4℃(国産原油) | API比重(外国産原油) |
特軽質原油 | 0.8107未満 | 39.00以上 |
軽質原油 | 0.8107~0.829 | 38.99~34.00 |
中質原油 | 0.830~0.903 | 33.99~30.00 |
重質原油 | 0.904~0.965 | 29.99~26.00 |
特重質原油 | 0.966以上 | 26.00未満 |
そして軽質であればあるほど、多くの割合でガスや石油など市場価値が高い製品に精製することができます。つまりこのAPI値は原油の価格に大きな影響を与えています。
もちろん重油やアスファルトが必要な産業もあるわけですし、重質油だからってガソリンやガスに精製できないわけではないので誤解なさらぬように。
炭化水素含有量
これは4種類に分類することができます。
原油タイプ | 代表的な原油 | 適した製品 |
パラフィン | ミナス、大慶 | 潤滑油、ワックス |
ナフテン | ベネズエラ | ハイオクガソリン、アスファルト |
混合 | アラビア、カフジ | 良質灯油、潤滑油、重油 |
特殊原油 | 台湾、ボルネオ | 高オクタン価ガソリン、溶剤 |
それぞれ採掘するエリアによって原油の特性があり、JXさんのHPによると
混合基原油である中東原油(アラビアンライト、アラビアンエキストラライト、マーバン、ザクム、カフジ、イラン等)がほとんどで、パラフィン基原油としてはインドネシア原油(ミナス)などが輸入されている。
らしいです。
非炭化水素系物質(硫黄、硫化水素など)含有量
これは2種類にわけることができて
スイート原油
硫黄や硫化水素の含有量が少ない原油
サワー原油(硫化水素が0.04モル%以上)
硫黄や硫化水素の含有量が多い原油
に分類されます。
どちらのほうが優れているかというと、それはスイート原油です。
なぜなら、精製する過程で硫黄分や硫化水素などが多く含まれていサワー原油はそれらを取り除くために”脱硫”という除去作業を専門の装置を使ってする必要があり、その分のコストがかかってきてしまいます。そのため、最初から含有量の少ないスイート原油のほうが高評価を得ています。
※硫黄は腐食性が強いものが多く、装置や機械を傷めたり、悪臭の原因になったりします。燃焼したときには、硫黄酸化物の一種である二酸化硫黄(亜硫酸ガス)となって大気中に放出され、体内に入ると呼吸を妨げ、喘息の原因なったりします。また、最近大きな問題となっている酸性雨の原因も、この硫黄酸化物や窒素酸化物といった酸性物質が原因です。
この3つの基準を踏まえた上で、価格や運搬費なども考慮して石油元売り各社は輸入するわけです。
じゃあ価格ってどこでわかるのー?っていうと、これも指標があって
WTI
ブレント原油
ドバイ原油
の3つがその指標にあたります。
で、この価格もそれぞれエリアで採掘できる原油の質と地政学上の影響などを受けて上下します。
WTI
これ、結構耳にしたり新聞で見たりしたことある3文字だったりします。なんか頭文字にWとかついてると
World
みたいな世界規模的な発想ゆえの間違いを起こしそうなんですが、この正式名は
West Texas Intermediate
なんですね。
WorldかとおもいきやWestっていうまさかの展開ですよ。
※WestSideでもTexasだから2PACは関係ないけどね。
ちなみにアメリカはテキサス州とニューメキシコ州を中心に産出される原油の総称であり、1つの油田原油を表すものではない。アメリカ国内で産出される原油の6%、世界で産出される原油の1~2%ほどを占める。
で、特に大事なのが
硫黄分が少なく、API比重0.827の軽質油
っていう点ね。
アメリカ産・スイート原油・軽質油
もうね、走・攻・守そろったエリート原油ですよ。
しかも去年アメリカは40年ぶりに原油輸出解禁したので、今後の原油界をリードしていくであろう大型選手になりそうです。
ブレント原油
お洒落に英語で表記すると、 Brent Crude
なんか本当にこんな名前の野球選手いるんじゃないかと思うくらい、なんかシックリくる。
なぜかイメージは2番セカンドね。
主にイギリスの北海にあるブレント油田から採鉱される原油を指し、その他にノルウェーのオセバーグ油田やイギリスのフォーティーズ油田から採れる原油も含まれる。間違えやすいですが、ブレンドでなくブレントです。
で、名前の由来は岩層区分の
Broom,
Rannoch,
Etieve,
Ness and
Tarbat
の頭文字をとってブレントです。
で、見てもらってわかるように、海のど真ん中なので、もちろん採掘現場は
もう、海上にそびえたつ城みたいなもんだよね。で、この石油価格指標に関連してヨーロッパを中心にやアフリカ、中東の豊富な精製石油の価格がつけられる傾向があって、しかも海上だから陸路なしでいきなり海上で積むしかないんです。
そんなブレント油田の特徴としてはWTIほどではないが良質な軽質油であり、 硫黄分は約0.37%で、スウィート原油に該当し、ガソリンや中間蒸留油に適している。つまり
欧州産・スイート原油・軽質油
こいつも十分トップを狙えるくらいにポテンシャルは抜群。
しかも最近は北アフリカや中東における混乱という地政学的な観点からみるとWTIよりも実はこっちのほうがポテンシャル高いんじゃないの?みたいな傾向も出てて、これまでWTIを中心に価格動向を見ていた専門家の中にも実はこっちが上みたいな論評もあります。
ドバイ原油
アラブ首長国連邦(UAE)の7つの首長国の一つドバイで算出される原油を指し、WTIや北海ブレントに比べて硫黄分が多い事から、両社と比較して割安な価格で取引されています。
そして日本を含むアジアではドバイ原油が原油価格の指標となっており、その性状は重質高硫黄で、他の中東産原油と異なり、ほぼ全量が定期契約に基づかないスポット市場で取引されるため、価格の指標性が高いです。 つまり
中東産・サワー原油・中~重質油
もうこの選手はとにかく値段が安いわけ。で、上にも書いた通り中東だから運賃がそんなにかからないっていうことでアジアはココから一番購入するわけです。
で、まさにオイルマネーで潤っている彼らが乗ってる車達はワイルドスピードとかでも使われてるこんな感じの車です。
いやいやいや、高くてもちゃんと良質な原油を買って少しでもガソリンとかに精製して売るほうがいいんじゃないの?って思う方いるかと思いますが、そこはさすが日本。
日本の製油所の精製能力ってたぶん世界一なんです(もちろんその精製能力を保つために修繕費だとか様々な設備投資費がかかっているのは当然なんですが)。なので、そういったドバイ原油を輸入してきても、しっかり精製して高水準の燃料を生成することができるんです。
その精製能力の高さの証明として出光興産が有する北海道製油所は寒冷地にあった軽油を特別に精製することができます。それに関してはコチラ
ちなみに日本でも問題になっている中国から流れてくるPM2.5は中国の製油所の精製能力が低いため、高水準な燃料を生成することができず、それを車に給油してエンジンが燃焼する事で結果として有害な排気ガスとなって大気汚染を引き起こしているんです。ホントイイメイワク。
まぁそんな3つが世間一般で言われている”原油”ってやつの価格を決めているわけです。
で、これが最新の価格動向
参照:世界経済のネタ帳
なんかこれ見てたら、さっきまで嘘を羅列していたんじゃないかっていうくらいWTIが最安値をつけている場面が多くてビックリしたんだけど、ただこれは
原油輸出が原則として禁止されている米国の原油価格(WTI)が国際原油価格よりも割安となる傾向が強くなっている
っていう影響を受けているためで、さっきも書いたように原油輸出が解禁された今後の価格動向はこれまでとは違った推移の仕方をするんじゃないかと思われます。
で、これに加えてマーケットは現物・先渡し・先物と3つの取引形態があるんですが、これはまた別の機会に説明できればいいと思います。
最後に
今回は身近だけどいまいちよくわからない”原油”について書きました。
ダラダラになってしまいましたが原油っていっても色々あるんだよーって少しでも思ってもらえれば幸いです。
今関商会
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