2020年04月13日

減産合意もOPECプラスは限界を露呈し、トランプ大統領の仲介が際立つ結果に

まずは現状把握

サウジアラビア

1960年の設立以来、これまでOPECの顔ともいうべき存在。

国内経済においては皇太子を中心にした経済革命中で原油に依存しない国づくりを目指しているが、その皇太子が結構クセ者。

皇太子は強硬派、敵対する者は全て何らかの方法で土俵から落としてきた経緯がある。2018年に起きたサウジアラビアのジャーナリストがトルコ国内のサウジアラビア大使館内で殺害された事件の黒幕ともいわれています。

これに対し友好関係にあるアメリカは、というかトランプ大統領はこの事件に関しては深く言及せず。というのも、サウジアラビアとの間に12兆円もの武器購入契約があること、敵対するイランへの対応なども含めてジャーナリスト一人の事件で友好関係を解消するまでには至りませんでした。

前回の減産調整でロシアが拒否したことに関して反応し、協調減産解除となった4月からそれまでの基準であった1,100万バレルから1,230万バレルまで生産量を上げています。

 

ロシア

アメリカにならぶ経済大国であり世界有数の産油国、天然ガスなど資源が豊富です。しかしこれまでOPEC非加盟国としてこれまで活動しており、OPECプラスの”プラス”はほぼロシアと言っても過言ではありません。OPECプラスというスタンスではあるものの、外部からの圧力による生産調整などには基本的に応じないスタンスです(これが結果として前回の協調減産の解消とサウジアラビアの増産を招きました)。

シェールオイルなどの増産などで世界一の産油国となったアメリカに対して強烈な敵対心をもっていて、今回の原油価格暴落を機にエネルギーにおいて少しでも世界シェアを拡大したいと企んでいます。

アメリカ

世界最大の経済大国であり、世界最大の産油国でもある。2017年時点ではロシア、サウジアラビアに次ぐ3位だったものの、シェールオイルの増産により生産量が2割増え、2018年には1973年から45年ぶりに世界一の原油生産量となりました。

しかしOPECプラスには非加盟であり、枠組みの活動などとは一定の距離を置いており唯我独尊を貫いています。中東の安定化に関してはサウジアラビアとの友好関係を築くことによって間接的に関与しています。

今回の原油価格暴落を受けてアメリカ国内のシェールオイル企業が倒産したりするなど、原油価格の暴落で一番煽りをくらっています。アメリカとしてはシェールオイルの採算ラインはだいたい$50前後なので、できるだけそのラインまで原油価格を押し上げたいのが本音です。

なぜ減産合意できないのか?

減産調整を行い、原油価格を上げることが可能になると

サウジ:輸出で国内収益改善!

ロシア:輸出で国内収益改善!

アメリカ:採算ライン($50)まで底上げできればOK!

他の産油国:輸出で国内収益改善!

 

なら、減産調整して原油価格を上げない理由はなくない?ってなるはずなんだけど、なぜ上手くいかなかったのか?

減産調整に合意したくせに減産していない国が存在する!!

なので結果

自国以外の”どこか”に減産してほしい

という事だったんですね。

で色々協議をしていたんですが結局先月3月31日をもって、減産調整が一度終焉を迎えるわけです。

ただ、先ほども書いたようにこのままだとアメリカ国内のシェールオイル企業が軒並み倒産してしまうので、トランプ大統領が仲介というカタチで緊急会合が開催される流れになりました。

今回の減産合意の内容

緊急会議開催当初は見通しがつかないということで、あまり期待できなかった緊急会合ですが、各国が譲歩して減産合意を締結することができました。

2020年5月1日~(2か月間)

減産量は合計970万バレル/日量 ⇒ 世界の原油生産量の10%に相当する
※メキシコを除く

2020年7月~12月まで

減産量は合計800万バレル/日量
※ただしメキシコの減産合意が条件

また今回の緊急会議とは別でG20の会合もあったため、サウジアラビアはアメリカに対して減産協力を要請するもこれをアメリカはやんわり拒否。

というのも、サウジアラビア、ロシア、その他アフリカの産油国は生産に関してどこも国営企業が運営しているがアメリカは民間企業が運営しているため、減産合意は結果として国から民間企業に対して生産調整を求めることになってしまいます。これは反トラスト法違反になってしまうため、国として認めるわけないはいかないというのがアメリカのスタンスです。

しかし全く協力しないのではなく、新型コロナウイルスによる経済鈍化のため自然と200万バレル/日量くらいは減産することになるだろうとトランプ大統領自身が発言しているので、規模としては十分ではないもののアメリカ自体も減産はすることになると予想されます。

また7月以降の合意に条件として挙がっていたメキシコですがOPEC加盟国ではありません。しかし有数の産油国でもあるので40万バレル/日量の減産を求められていましたが、これを拒否しました(正確に書くと40万バレル-32万バレル-24万バレルという段階的減産)。

しかし最後の最後で減産合意できない状況に業を煮やしたのか、メキシコに対してアメリカが減産分の40万バレル/日量のうち30万バレル日量を肩代わりすると宣言したので、どうにかこうにか減産合意することができました。

減産合意後の展開

どうにかこうにか減産合意しましたが、じゃあいきなり原油価格がドーーンと上がるかといえばそうでもなくて現実問題はそんなに簡単な話ではありません。

新型コロナウイルスの影響で世界経済が停滞しているため、原油のニーズは2,000万~3,000バレルが消失していると言われています。

なので歴史的減産合意などと大々的に発表されてはいるものの、その減産分は970万バレル。なのでまだまだ原油生産過多になっている状況です。

また生産量を4月から上げたサウジアラビアは基準となる1,100万バレルから850万バレルまで減産することに合意しましたが、実際は1,230万バレルまで増産してしまっているので380万バレル減産しなければいけません。

そのため今回の減産合意が原油価格の上昇にどこまで影響を与えることができるのかは不透明です。

5月からの減産とはいえ、普通ならこの合意は発表された時にすぐさま市場が反応しそうなものですが、今のところ原油価格は思ったより上がっていません。

今回の総評

結果として合意したものの、結果としてアメリカがというか、トランプ大統領がその影響力を全世界に知らしめたというのが一番目立った気がします。

  1. サウジアラビア・ロシアをテーブルにつかせて仲直りさせた。
  2. アメリカは200万バレルの減産のみで済んだ(調整ではなく自然減産)。
  3. メキシコの肩代わりでメキシコに恩を売った。
  4. 反故になりそうだった合意をメキシコ分(30万バレル)の肩代わりで世界に恩を売ることに成功。
  5. 大統領選前に国民への大きなアピールとなった。

どちらにせよ、さきほど書いたように原油価格もあがってきていないのが現在の状況です。

まだまだ新型コロナウイルスの終焉が見えないので、このままかもう少し上がった$25~27くらいで原油価格は落ち着くのではないでしょうか。

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今関商会

1952年創業の今関商会の三代目。 大学卒業後、出光興産(株)の東海支店にてガソリンスタンドの現場から販売促進課、工業用潤滑油課、販売店担当などを経て退社。 2013年より、実家である(株)今関商会に入社。 趣味はNFL鑑賞と筋トレ 2児の父でもあります。 会社ではSS現場やブログ、Facebook、instagram等、SNSの更新も行っています。

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