2016年04月05日

【原油】イラン増産までの道程を逆再生、アメリカとサウジアラビア、シェールオイル・ガスと原油価格下落の背景

2016年4月4日、YahooNewsにこんな記事が

<原油価格>下落に拍車か イラン輸出拡大、増産凍結に暗雲

イランのザンギャネ石油相が3日、1日当たりの原油輸出量が200万バレルを超えたことを明らかにした。1カ月前に比べ1日当たり25万バレル増加。イランの増産姿勢が鮮明になったことで、一服していた原油価格の下落傾向に拍車がかかるのでないかとの見方が広がっている。

これを掘り下げていくうえで知っておかなきゃいけない事を段階的にざっくり説明していきます。

まず、イランとその経済制裁について書こうと思います。

イランとその経済制裁

これは

2006年からイランにおける深刻な人権侵害や核開発問題を受け、多数の国や多国籍企業がとっている措置。制裁は一般的に核兵器、ミサイル、特別な軍事技術などの軍事関連の輸出を禁止し、または、石油、天然ガス、石油化学製品に投資することも禁止している。加えて、イランの金融機関を国際的な取り引きから締め出している。

wikipediaより抜粋

 

ようは、核開発をさせたくないがために、色々といちゃもんをつけて経済制裁を行ったって事です。だってこれ以上核保有国が増えたら、また国家間の戦力均衡図が変わるし、みんな外交カードとして”核”を使いだすから、世界警察ぶってるアメリカはそれが嫌なんでしょう。

 

で、この経済制裁によってイランは原油取引ができなくなったため大打撃を受けます。ただこれまでイランから原油を輸入していた国々も取引ができなくなったので、他の国から輸入する必要がでてきました。その時に代替えの供給先になったのがサウジアラビア。

 

ん?確かアメリカとサウジアラビアって仲よくなかったっけ?

 

そう、アメリカとサウジアラビアは原油が欲しいアメリカと安全保障が欲しいサウジアラビアという事で互いの利害関係が一致してたんですね。

 

なんか臭うね、この流れ。アメリカは世界警察として権力を世界に示すことができて、サウジアラビアはイラン分の原油を世界に輸出できることができる。こんなうまい話なんて滅多にないでしょ。

 

あとイランとサウジアラビアの関係については、フィフィさんの

fifiサウジアラビアとイラン何が起きてるの?

 

を読むとよくわかります。

 

でも、こんな蜜月の二か国も次第に関係が悪化していきます。その理由は

 

アメリカによるシェールオイルの採掘

 

シェールオイルとは

シェールオイル(英語:shale oil)とは、地下深くのシェール層に埋まっている石油の一種のこと。頁岩油(けつがんゆ)、シェール油、ライトタイトオイル(英語:light tight oil)とも言われている。

技術革新により増産が進んでおり、アメリカではシェールオイルを含む原油の増産が2008年の日量約500万バレルから2014年は800万バレルを超え、2014年5月、国際エネルギー機関(IEA)は「拡大する米国のシェールオイル生産によって今後5年の世界の石油需要増加分をほとんど賄うことができる」との予想を発表した

wikipediaより抜粋

TKY201207060623

ちなみにシェールガスとシェールオイルの違いは

シェール層を高圧水流で破砕し人工的に無数のひび割れを作ってその隙間からシェール層内に封じ込まれている石油と天然ガスを掘削する訳ですが、取れた石油をシェールオイルと呼び天然ガスをシェールガスと呼んでいる。

参照:http://www.e-shalegas.net/oil/

これまでシェールガスを耳にする機会が多かったと思いますが、その理由は同じ地域に埋蔵されているシェールオイル・ガスでもシェールガスの埋蔵量のほうが多く確認されているのと掘削費用がシェールガスの方がコスト安の為、シェールガスの掘削が先行していたためです。

シェールオイル

 

で、これまでサウジアラビアからの原油に依存していたアメリカが自国で原油を採掘するようになったため、サウジアラビアへの依存度が減ったわけです。こうなると困ったのはサウジアラビア。どうにかこうにか依存してほしいから打った手は

 

 

原油の価格破壊!!(原油の増産)

 

 

まぁこれはサウジアラビアだけでなく原産国全体の対応なんですけどね。原油を増産させて価値を下げることで価格を下げたわけです。なんでこんな対応したかというとOPEC以外の産油国(ロシアなど)を石油マーケットから締め出したい(消耗戦)という思惑もありつつ、サウジアラビアの狙いは

 

 

アメリカに振り向いてほしい!

 

 

アメリカはシェールオイル・ガスを採掘して内製化したい。
でも採掘するための重機が必要
その重機の燃料は石油(なので原油輸入は必須)
採掘したシェールオイル・ガスは精製が必要(=生産コストがかかる)
シェールオイル・ガス製品の販売価格があがる
そんな高い商品を消費者は買わない
だから売れない
じゃあ、そんな売れない商品にわざわざ金かける必要ないでしょ

 

じゃあ原油輸入で!!
(今の関係のままで)

 

ってなるのを描いたんでしょうね。

 

で、これは功を奏します。

 

現にシェール革命とまで言われていたシェールバブルは弾け採掘会社は軒並み倒産して、アメリカを振り向かせることに成功しました。

 

でもここで誤算が発生します。

 

その誤算については、またこちらの記事で。

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今関商会

1952年創業の今関商会の三代目。 大学卒業後、出光興産(株)の東海支店にてガソリンスタンドの現場から販売促進課、工業用潤滑油課、販売店担当などを経て退社。 2013年より、実家である(株)今関商会に入社。 趣味はNFL鑑賞と筋トレ 2児の父でもあります。 会社ではSS現場やブログ、Facebook、instagram等、SNSの更新も行っています。

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